コレクション: ウッデン ドールの家族
人を象った「人形」を作るという行為は、歴史の中で時代や国を問わず存在する、人類に深く根付いた慣習といえます。例えば、古代エジプト人の墓で発見された木製の人形の起源は、紀元前 2030年まで遡ります。宗教的な儀式、呪いやまじない、学び、遊び、外敵に対する威嚇や防御、装飾まで、人形は国や文化を超え私たちの暮らしの中で何らかの役割を担ってきた存在です。
アレキサンダー・ジラードの孫で、ジラードスタジオのアレイシャル・ジラード・マクソンに話を聞きました。
私たちの祖父であるアレキサンダー・ジラードもまた多くの人形や人型のオブジェを蒐集していました。祖父のコレクションは、後にサンタフェのMuseum of International Folk Art設立の基盤になるほど膨大な量でしたが、その蒐集の最初の1点は、イタリアで子供の頃にもらった木製のピノキオでした。現在でもMuseum of International Folk Artには、100以上の国から集めた何千体もの人形が含まれており、祖父が人形というオブジェに対して特別な意味を見出していたことがわかります。
そのため、15年ほど前、 「ヴィトラ デザイン ミュージアム」 が保管していた所蔵品の中から、アレキサンダー・ジラード 自身が作成した木製人形のセットを発見した時私はそこまで驚くことはありませんでした。それらは、私が子供のころ、祖父母の家では一度も目にしたことがないものでしたが、自然と心に馴染みました。私たちは、父を通して、祖父がこの木製人形のファミリーをどのように作ったのかを知りました。それは祖父が新しいのこぎり付きのバンドソーを購入した時だったそうです。祖父はいつものように、新しい道具を夢中で試しながら、メキシコのカチナ、日本のこけし、子供の頃のおもちゃ、さらにはロボットを連想させるような曲線や形を描きながら木を削っていきました。しかし、塗装と装飾を施した完成品は、いかにもアレキサンダー・ジラードらしい風貌になりました。この木製人形たちは、ミッドセンチュリーという時代を現代の私たちに伝える標石であり、「ウッデン ドール」として製品化された今もヴィトラを代表するマスコットのような製品です。
ウッデンドールがなぜいつの時代も愛されるのか。それは、ひとりひとりの個人が、人類という大きな存在の中のひとつでありたいと願う気持ちは時代に関わらず変わりません。この風変りで多色多彩なウッデンドールの家族は、ひとりの人間の感情の幅を広げ、私たちを包括するより大きなものの存在と、私たちもまたその大きな集合体の一部であることを思い出させてくれます。
ウッデンドールは、どのような空間においても個性的で印象深い製品です。ウッデンドールのファミリー に、スーパーラージサイズの新しい2人のメンバーが加わることをとても嬉しく微笑ましく感じています。世界中の国々の住まいに、さらなる彩りと茶目っ気あふれる喜びをもたらしてくれることでしょう。
Vitra Magazine / Publication date: 3.11.2022
Images: © Girard Studio, LLC; Vitra;