コレクション: Mynt with Erwan Bouroullec
ヴィトラの新作チェア「ミント」のリリースに先がけて、デザイナーであるエルワン・ブルレックが来日。あたらしいチェアの紹介とともに、自身のライフスタイルや日本から受けるインスピレーションについても語ってくれました。
今回「ミント」で実現した「座りながら動く」椅子について教えてください。
「1日中体を動かし続ける」ことが、身体的な健康につながるということから、動きを取り入れたい椅子を作りたいと考えたんです。それはたとえば猫のように。猫は寝ている時以外、動き、伸び、ずっと動いています。それは健康的であるとともに、能力を高めることでもあり、さらにはリラックスすることでもあるんです。

「ミント」というネーミングもユニークですね。
ハーブの「ミント」に由来しています。ミントはフレッシュなフレーバーで、飲み物や食べ物に自由に加えて楽しむことができる。この椅子も同様に、多様な場所や用途で使うことができ、新たな座り心地をもたらします。スペルは“Mint”ではなく、“Mynt”にしています。時に椅子は、自分の靴のように長い時間一緒に過ごす相棒のような存在になることから、“My”を潜ませています。とても気に入っているネーミングです。


普段、スタジオではどんな椅子を使用していますか?
僕のスタジオは、1階が裁断や接合などの作業ができる機械が置かれたラボ的なスペースで、2階がテーブルやコンピュータ作業用のデスクが中心のスペースという2階建て。場所を固定せずに、常にどのデスクにも自由に移動できるので、いろいろな高さの、さまざまなタイプの椅子を置いています。

自宅のインテリアについて教えて下さい。
僕は妻と15歳と11歳の2人の娘、そして犬と一緒に暮らしています。自宅にはジャン・プルーヴェの大きなテーブルがあって、子どもたちはそこで宿題をしたり遊んだりしています。テーブルの上にも床にも、いつも子どもたちの物が溢れかえっていて、犬も一緒になって散らかしています(笑)。でも暮らしにおいてもっとも大切なことは、インテリアや家具にとらわれない、自由な感覚を持つことだと思うんです。インテリアを理由に”こうしなくてはならない”とか”こうしてはいけない”と示すのはよくないことだと思う。想定と違った使い方をしたっていいんです。ちなみに僕は家の中だとキッチンが好き。料理をすることも食べることも好きだから、お気に入りの場所なんです。
では、「ホームオフィス」のスペースはないのでしょうか?
そうですね、僕の「ホームオフィス」は…….頭の中にあるという感じかな。娘たちがどう過ごしているか見ることも、その活動のひとつかもしれない。子どもはとてもおもしろいね。大人になるとある意味ルール通りに生きてしまうが、子どもにはまだ知らないルールがたくさんあるから、自由に空間や物を使っている。一見乱雑にみえることも、実は理にかなっていたりする。だから家で娘たちの過ごし方を見ることは、仕事へのよいインスピレーションになっています。

今回久しぶりの来日だそうですね。日本にはどんな印象を持っていますか?
日本は約6年ぶりですね。日本には、僕が“ポジティブ・ミニマム”と称する概念があると思います。少ない物や行動を慎重に選び、そこから何かを極めていく。そんな日本のミニマリズムの文化に、いつも魅力を感じています。人生でもっとも素晴らしいことは、人、場所、文化……あらゆる多様性に触れることだと思っています。日本を訪れるたびに、そのユニークさに感銘を受け、フランスとの違いを楽しんでいます。
