「プルーヴェ カラー」のひみつ。
これまでそれほど多く語られてこなかった、ジャン・プルーヴェの色彩の世界。建築や家具に施されたカラーには、どんな意図があったのでしょうか?
工業発展の波を受けて、次々に新しい金属加工技術を修得し、多様な作品を手がけていったジャン・プルーヴェ。自らの手で次々に新しい技法を考案していった背景には、目まぐるしく変化する時代や情勢にフレキシブルに対応し、人々の本質的なニーズに応えたいという率直な思いがありました。
15歳でキャリアをスタートしてからずっと、生涯を通じて向き合ったのが、いかにシンプルな方法で、確かに持続する構造体を金属でつくることができるかという課題。その解決策の一つとして、プルーヴェが考えたのが、塗装によるコーティングでした。金属にとっての最大の敵とも言えるのが「水」です。雨水や空気中の水分が長時間金属に付着すると酸化皮膜が壊れ、そこから腐食が進行。構造体は脆くなってしまいます。これを防ぐために、塗料によるコーティング施し、水から金属を保護。油や汚れなどもつきにくく、メンテナンスも容易になったと考えられます。
画家の父の元で色彩感覚を育んだプルーヴェは、色選びにもとりわけ慎重だったようで、ジャン・プルーヴェの工場である「アトリエ ジャン・プルーヴェ」に残されていたカラーパレットを見るとわかるように、バリエーションは豊かなものの、ベージュやグレー、淡いグリーンなど、全体的に落ち着きのあるトーンにまとめられています。
「卵の殻」「小麦」「レモン」「テラコッタ」「フェルメール」など、各色についたユニークなネーミングを見る限り、ジャン・プルーヴェがいかに身近なものから色のモチーフを探り出し、配色を考案していたかがうかがえます。
今秋ヴィトラはこのパレットから選んだ4色「Gris Vermeer/グリフェルメール」「Blé Vert/ブレヴェール」「Bleu Dynastie/ブルーディナスティ」「Blanc Colombe/ブランコロンブ」をはじめとした、以下の全7色を展開します。
グリフェルメール(Gris Vermeer)
オランダ人画家ヨハネス・フェルメールの作品にちなんだグレー
ブランコロンブ(Blanc Colombe)
「白い鳩」の意。鳩の羽の色に着想を得たオフホワイト
ブルーディナスティ(Bleu Dynastie)
中国明朝の青花磁器に見られるコバルト色に着想を得たブルー
ブレヴェール(Blé Vert)
青い麦」の意。実る前の青々とした小麦の色を表現
ブルーマルクール(Bleu Marcoule)
1950年代にマルクール社の発注に対し開発されたカラー
ディープブラック
2013年以降、ヴィトラ製品全体の定番カラー
ジャパニーズレッド
2006年にプルーヴェ製品に採用、現在はヴィトラ製品全体の定番カラー
よりカラフルになったプルーヴェコレクションを、是非チェックしてみてください。
Publication date: 9.2022Author: Hisashi Ikai
Title & Illustraion:Bob Foundation
Images:
© Fonds Jean Prouvé at the Archives départementales de Meurthe-et-Moselle
ヴィトラとジャン・プルーヴェ
1980年代にヴィトラの現・名誉会長ロルフ・フェルバウムは、一脚の「アントニー」に出会ったことからプルーヴェ作品の蒐集と研究を始めました。1950年創業のスイスの家具メーカーであるヴィトラは、1999年にプルーヴェファミリーとの話し合いを経て、全プルーヴェ製品の復刻と製造販売権を獲得、2002年ヴィトラからジャン・プルーヴェ製品が初めて発売されました。この製品コレクションはバリエーションや製品を追加しながら継続しています。また、ヴィトラデザインミュージアムは、現在、世界最大級のジャン・プルーヴェのヴィンテージコレクションを有しています。