フランス海辺の夏の家と
「フォトゥイユ カングルー」

フランスの海岸沿い、プロヴァンス地方の街、プラージュ・ド・サン=クレアの住まいの古い写真。これは、ロジャーとマルグリット・ドランダーの夫婦が、家族や友人達と過ごした夏の素晴らしい記録を映し出しています。住まいの中にはAteliers Jean Prouvé(アトリエ ジャン・プルーヴェ)によって特注で作られた家具が所狭しと並んでいます。まるでタイムカプセルのように、過去から現代へ、時代を越えた風景を眺めているような思いに駆られます。

後に「ヴィラ ドランダー」として知られることになる、ミッドセンチュリー期の夏の家は、ジャン・プルーヴェの弟のアンリ・プルーヴェが建てました。それは、機能性を追求した美しさと、無駄を削ぎ落したシンプルな生活様式を組み合わせたジャン・プルーヴェと同様のデザイン哲学を継承し、本質的に必要不可欠な要素の積み重ねにより構成されています。

1948年にジャン・プルーヴェによって設計された「フォトゥイユ カングルー」は、もともと特別なクライアントのために限られた数で生産されたラウンジチェアです。ドランダー家の夏の家のためには、二人掛けできる珍しいモデルを含む4脚が作られました。

彼らの孫であるオリヴィエ・ラランドによれば、竣工にいたる最後の工程で議論の的になったのは家具でした。彼はこう語ります。

フォトゥイユカングルーに座っている両親、叔母、友人の姿を思い出します。読書をしたり、お酒を飲んだり、ギターを弾いたり。ゆったりと広くて快適な椅子でした。

素材そのままのスチールチューブをベースにした3脚は、ひとつは赤、他は緑、それぞれ生地が張られ、祖母によって白いパイピングが施されていました。また、ジャン・プルーヴェは、赤い色のスチールチューブがベースとなる二人掛けのフォトゥイユカングルーもデザインしました。

フォトゥイユカングルーは主に居間で使用されていましたが、時には、庭や海岸風景を楽しむために屋外に持ち出されて日よけパラソルの下に置かれることもありました。

ドランダー家では、50年以上3世代に渡り、4脚のフォトゥイユカングルーを愛用し、使い続けていました。ジャン・プルーヴェの工房であったAteliers Jean Prouvéが閉鎖してから70年以上を経た今、この4脚のラウンジチェアは当時から現代に受け継がれる貴重な遺産であり、ジャン・プルーヴェのデザインを蒐集する個人のコレクターが所有しています。

記事内の写真は、Ateliers Jean Prouvéのクライアントでありプルーヴェ兄弟の友人でもあったロジャーとマルグリット・ドランダーの孫にあたるオリヴィエ・ラランドの好意により提供されました。

 


Publication date: 13.6.2022
Author: Stine Liv Buur
Images: © 2022, ProLitteris, Zurich ; With permission of Olivier Lalande