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イームズ夫妻が愛した木彫りのクジラ

イームズハウスとスタジオには、奇妙な住人が暮らしていました。それは全長2メートルを超える木彫りのくじら。作者は不明、アメリカ北西部沿岸に暮らす先住民族であったセイリッシュ族のフォークアート、つまり民芸品です。

チャールズ&レイ・イームズは、人の手によって描かれた民芸品、とりわけ白と黒の色合いの物を好んでいました。このクジラは住人であるとともに、写真撮影のレギュラーキャストでもありました。例えば、かの有名な「イームズ ラウンジ チェア」の最初の宣材写真にも登場しています。

イームズ夫妻は、海に暮らすくじらをユーモアたっぷりに具象化したこの民芸品をこよなく愛していました。その背景には、自然や自然界の生き物、世界中のあらゆる文化とその文化から生まれる民芸や工芸品へのイームズ夫妻の深い関心と、時代や流行に左右されることのない世界観が映し出されています。

イームズ夫妻は、当時20世紀に活躍していた数々のデザイナーとは一線を画し、遥かに遠く、そして広い視点で物事を捉えていました。自然、文化、産業、その垣根を超えた絶妙なバランスが、彼らの活動と作品の特徴でした。彼らはデザインという分野に閉じこもるのではなく、宇宙、自然、風景、生き物、数千年の時を越えて息づく民族や文化、自らを取り巻く世界のすべてに興味を向けていました。彼らの広く深い興味は、‘Powers of Ten’、‘Day of the Dead’ や‘Banana Leaf’などの映像作品にも如実に表現されています。
イームズ夫妻は、自らのデザインとともに数多くの民芸品やおもちゃ、旅や日々の暮らしで見つけたさまざまな物を収集し、そのコレクションは結婚当初から増え続けていきました。そのすべてが暮らしを豊かにし、人々を啓蒙するであろうと信じていました。レイ・イームズはこう語っています。

 
「私達はコレクターとして何かを集めたことは一度もありません。
しかし、集めてきた物たちを見るだけでいつも素敵なアイデアが浮かんでくるの。
それはきっと、その物自体が誰かの想いを宿しているからじゃないかしら。」
ー レイ・イームズ
 
イームズ夫妻は、真剣にかつ大きな喜びをもって、自邸であるイームズハウスを飾りました。イームズハウスはまるで絶えず変化し続けるコラージュのよう、それは彼らの人生そのものでもありました。

イームズ ハウス バード」と呼ばれる黒い鳥とともに、木彫りのクジラは、展示やチャールズ・イームズによる写真撮影に登場しては、味わい深い独特の空気感を放つ存在でした。フォークアートや民芸の文脈ではなく、イームズ夫妻が作り出す世界に突然それらのオブジェを登場させることで、見る人の目をひき、想像を超えた新鮮な違和感を抱かせる視覚的な効果を狙っていました。
このクジラが最初に人々の前に姿を現したのは1952年、ロサンゼルスにあるハーマン・ミラーのショールームを初めてチャールズ&レイ・イームズが手掛け、撮影した記録写真の中でした。同年、イームズハウスに併設するスタジオでも撮影され、その後1955年、最新作であったイームズラウンジチェアの初めて製品写真にも印象的に使われました。

ヴィトラが、全長70cmに縮小し復刻した「イームズ ハウス ホエール」は、イームズ夫妻が愛した木彫りのクジラのようにひとつひとつ人の手によって模様が描かれています。


Publication date:23.1.2020
Auther:Stine Liv Buur
Images:© Eames Office, LLC